「俺、お前との距離は一生変わらないと思ってた」
「……?急に何だ」
「いや、ちょっとな。ふとそう思っただけ」
「そうか……」
「だってお前の第一印象最悪だったからな。初めて会った相手に、しかも俺には直接関係ない理由で恨まれて、
殺すって言われたんだぜ?あの頃は恨まれる理由もさっぱり分かんなかったし大っ嫌いだったな」
「………………」
「でもKOFを通じてお前を知って、草薙を知って、八神を知って……やっとお前のこと理解できた気がした。
庵に近づけた気がしたんだ。それまで俺たちの関係は草薙の日輪、八神の三日月みたいなもんだと思ってた。
笑っちまうぐらいそっくりなんだもんな」
「……どういうことだ?」
「ん?お前のイメージってまんま三日月だったんだぜ?冷たく光って鋭く尖ってて、時には自分の存在を見せ
つけ、時には隠れてみせる。お前が追いかければ俺は逃げるし、俺が追いかければお前が逃げる。追っても
追っても追いつくことはない……まるで太陽と月みたいだろ?」
「いつ俺がお前から逃げたんだ?」
「逃げたじゃん。俺が庵のこと思って歩み寄ったのに、庵は俺のこと拒否するし」
「当たり前だ。お前を殺すことこそが俺の最大の目的だったのだからな」
「ま、今はこうして一緒に居る訳だけど出逢った頃を思い出すと不思議だなって。あの太陽と月みたいにこの
距離が縮まることはないって思ってたから。その代わり、ずっと一緒に居るんだろうなとは思ったけど」
「何故だ?俺のことは嫌いだったのだろう?」
「ああ、嫌いだったぜ?でもお前は俺の都合なんて知ったこっちゃないだろ。あれだけ殺す殺すってしつこい
んだからそう簡単には諦めないだろう、これからもずっとお前と闘っていくのかな……って思ったら悪くは
なかった」
「…………?」
「確かにしつこいしうるさかったけど、お前と闘うのは楽しかった。庵と闘うとゾクゾクしたし、まだまだ俺
は強くなれる……そんな気がした。こんな感覚は今までなかった。これが今までずっと俺の求めていたもの
なんだって、そう思った」
「……………」
「それからかな。俺が庵にもっと近づきたい、もっともっと庵と一緒にいたいって思ったのは。ずっと変わら
ない距離で見つめ続けるよりも、近づきたいって」
「京……」
「月が太陽に光を貰ってるんじゃない。太陽が月に惹かれて、どうしても近づきたくて、でもどうしても近づ
けなくて。せめて自分の光だけでも月に届けたい、自分の光で月を優しく包みたいって思ったから、太陽は
月をずっと見つめ続けてるんだよ。その方が月がよく見えるしな……」
「……………///」
「その想いに月も気付いて、まるで返事をするように光り返してるんだ。太陽に見てもらえるように、周りの
星たちに負けないぐらいにな」
「ん……///」
「月が姿を変えるのは、ずっと太陽に見つめ続けてほしいから。色んな自分を見てほしいから。…太陽に飽き
られないように」
「ふ……っ…///」
「そんなことしなくても太陽は月にベタ惚れなのに、月が色々な顔を見せるものだから太陽は月に惑い、引き
寄せられる。他のものにも光を与えなければならないのに、太陽は月から目が離せなくなるんだ。月が自分
から離れていかないように、逃げ出さないように、太陽は月だけを見つめ続ける」
「あ…京ぉ……///」
「俺は一生お前を見つめ続けるよ、庵・・・」
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